
●弾力勤労制が足かせに
弁護士、労務士など労働専門家が設立したNGO『職場パワハラ119』によると、今年の最低賃金は時間あたり8720ウォン(約828円)で昨年よりも名目上では1.5%上昇した。月給に換算する場合には182万2480ウォン(約17万3000円)となる。
また、▲公休日など有給休暇の拡大(30人以上の事業場)、▲週52時間の上限制拡大(5人以上の事業場、7月1日より)、▲家族支援労働時間の短縮拡大(30人以上の事業場、家族を支援する場合には週15〜30時間に短縮)、▲国民就業支援制度(休職促進手当最大300万ウォン[約28万5000円]支援)などが実施される。
しかし今年から賞与金と福利厚生費が最低賃金に算入され、実際の給与は凍結または削減される可能性があると同団体は指摘した。
毎月支給される賞与金のうち、最低月給の15%(27万2810ウォン、約2万6000円)と、毎月支給される福利厚生費のうち最低月給の3%(5万4562ウォン、約5180円)をそれぞれ超過する金額は最低賃金に算入される。
理由は企業によっては、毎月の給料の内訳が基本給と均分した賞与金の合計になっている場合があるためだ。政府はこうすることで、計算が複雑化されず企業は最低賃金を守れるようになると説明する。
また、7月1日より週当たりの勤労時間52時間上限制が、5人以上が働くすべての事業場に適用されるが、6か月単位での弾力勤労制が追加で新設され、事実上、一年じゅう弾力勤労制の運営が可能となったと同団体は説明した。
弾力勤労制とは、単位となる期間内で平均労働時間が法定勤労時間を超過しなければ、特定の日(または週)で法定勤労時間を超過しても、延長勤労手当を支給しなくてもよい制度だ。季節によってノルマが異なる製造業などで有利となる。
企業の立場では、超過で働かせた分だけ別の日で減らせば手当を払う必要がない。なおこの制度によると、ある週で40時間働かせる場合、別の週では最大で64時間まで働かせることができる。
『職場パワハラ119』側は「2021年の最低賃金は少しだけ上がったが、賞与金と福利厚生費が含まれ、月給は据え置きだ。労働時間は週52時間に短縮されたが、弾力勤労制により64時間までタダでの夜勤ができるようになった」と指摘した。
同団体は「弾力勤労制は労働者の正当な月給を奪う月給泥棒」とし、「包括賃金制を規制するといった政府の約束は無くなり、弾力勤労制という合法的な泥棒を通じ労働の対価を奪っている」と批判した。