[コラム] 今度は、そしてまた「アパッチヘリ」なのか?〜“平和大統領”になると誓った文在寅政府、またしても軍備拡充(鄭旭湜)
[コラム] 今度は、そしてまた「アパッチヘリ」なのか?〜“平和大統領”になると誓った文在寅政府、またしても軍備拡充(鄭旭湜)
  • The New Stance編集部
  • 承認 2021.04.09 14:21
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(編集部)韓国で著名な在野の北朝鮮研究者であり平和運動家である鄭旭湜(チョン・ウクシク)平和ネットワーク代表が、韓国のオンラインメディア『プレシアン』に寄稿したコラムを正式な承諾を得て掲載する。

今回は、とどまることを知らない文在寅政権の軍備拡充についてだ。韓国の国防予算は2019年に46兆7000億ウォン(約4兆5700億円)、20年には50兆1500億ウォン(約4兆9000億円)、21年には52兆8000億ウォン(約5兆1600億円)と増加し続けている。なお、日本の21年度国防費は、約5兆5000億円だ。

私は『プレシアン』などを通じて文在寅(ムン・ジェイン)政府の過去にない軍備増強を批判しながら、これについての公論化を主張してきた。大規模な軍備増強が金正恩(キム·ジョンウン)政権の対南近親憎悪の主な原因になってきたとし、南北関係の回復と「韓半島平和プロセス」再開のために、大規模な韓米連合訓練の中断と共に軍備調節の必要性を強調してきた。

大々的な軍縮は難しくても、少なくとも国防費の凍結はいくらでも可能で、また切実だという点も強調してきた。国防費を凍結または小幅に減らしても、適切な水準の軍事力の建設が可能だとも付け加えてきた。国防費を節減し、苦境に陥った庶民の生活を救うために使うべきとも訴えてきた。

しかし、文在寅政府の軍事強国に向けた熱情は冷めることは知らないようだ。国防費を調節して庶民生活の救済に使うべきだという主張も、少数の声に止まっている。その間に大規模な軍備増強については「南南一致」現象まで起きている。対北朝鮮政策をめぐる「南南葛藤(※)」を韓国社会と政治の最大の弊害というが、いざ南北関係と韓半島(朝鮮半島)の平和に最も大きな影響を及ぼす大規模な軍備増強を行う問題については、巨大な沈黙だけが流れる。

※(訳注)南南葛藤とは、北朝鮮に対話を優先する融和的な態度を取るか、圧力を強める強硬な態度を取るかをめぐり韓国内で争うことを指す。

こうした中、文在寅政府は「アパッチ級」ヘリ36台を海外から購入して、海軍の掃海ヘリを国内での研究開発で確保することにした。アパッチ級ヘリは3兆1700億ウォン(約3100億円)を投入して36機を購入し、掃海ヘリには8500億ウォン(約830億円)を投入する計画だ。韓国はすでにアパッチ級36機をはじめ、ヘリコプター660機を保有する「ヘリコプター強国」だ。それにもかかわらず、また莫大な予算を投じてヘリコプターを導入するという。

アパッチと掃海ヘリ導入事業の背景には、立体機動作戦が見え隠れしている。この作戦は有事の際、「敵の縦深地域に速やかに機動し」平壌を占領し、速戦即決で戦争を終わらせるという目標を抱いている。文在寅政府になって、空中から投入される空挺師団、地上から進撃する機動旅団、海上から投入される海兵隊の尖端武装化も急いで行われている。

韓国のNGO『平和ネットワーク』の鄭旭湜(チョン・ウクシク)代表。本人提供。
韓国のNGO『平和ネットワーク』の鄭旭湜(チョン・ウクシク)代表。本人提供。

アパッチ級ヘリと掃海ヘリ事業もこれとつながっている。作戦半径360キロ、最大巡航速度269キロ、最大16発のヘルファイア空対地誘導弾を搭載できるアパッチは、有事の際に北朝鮮に侵入して縦深打撃を加えることができる核心的な武器だ。また、掃海ヘリは海岸に設置された機雷を探索・除去する役割を果たす。一言で、「上陸作戦支援用」ということだ。

こんな形の軍事作戦の樹立と軍備増強を続けながら、韓米連合訓練を「防御用」と言ってみたところで逆効果だけが大きくなる。このため2018年の南北首脳会談で「段階的軍縮」を推進することにして『9.19南北軍事合意書』を採択した時、文在寅政府は、『国防改革2.0』計画を大々的に手術するべきだった。しかし、政府は逆の方向に向かった。

国防政策の目標は何だろうか。戦争の抑制が最も基本となる。そして韓国はすでに北朝鮮に対する抑止力を持っている。抑制が失敗すれば、防御と撃退をしなければならない。 これについてもやはり相当な能力をすでに保有している。しかし、こうした水準を越え、有事の際に北朝鮮を武力で占領するという目標を立てれば、事情は変わる。

国防部によると、北朝鮮には正規兵力128万人、予備兵力762万人がいるという。 私はこの数字を相当に誇張されたものだと考えるが、いずれにせよ北朝鮮に武器を扱える人が非常に多いことは事実だ。また領土の80%近くが山岳地形で、全国土は要塞化されている。そのうえ、核兵器とミサイル能力もかなりのものだ。こんな北朝鮮を相手に、有事の際に武力統一を試みる場合、どんなことが起こるだろうか。

過度な軍事的楽観主義が戦争に投影される場合、悲惨な結果を招くのが常だ。第一次、第二次大戦中、北朝鮮の南侵による朝鮮戦争と、それに続いた国連軍の「北進統一」の試み、米国のベトナム戦争介入、ソ連のアフガニスタン侵攻、米国のアフガニスタンおよびイラク侵攻などが語る教訓がある。これらの戦争は一様に楽観主義で始まったが、「その結果を知っていたなら始めなかった」という後悔を生んだ。

ところが、「ろうそく革命」で誕生した、「平和大統領」になると誓った文在寅政府の国防政策に、こんな軍事的楽観主義が幅を利かせている。「段階的軍縮」どころか、最悪の軍備競争が韓半島の上空を徘徊している。莫大な規模の血税を蕩尽しながらだ。

壁に向かってでもこう訴えなければならないのか。うなぎ登りの国防費のおかげで世界6位の軍事強国になったことを自慢だけするのではなく、地面がへこむほどため息をつく多くの国民の生活を直視してみなさい、と。

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著者紹介:鄭旭湜(チョン・ウクシク)。1972年生まれ。韓国のNGO『平和ネットワーク』代表。高麗大学政治外交学科を卒業後、北韓大学院大学で軍事・安保専攻で北韓学修士。99年に「平和軍縮を通じ韓半島の住民が人間らしい生活を送れるようにする」ため、同団体を設立し、今まで代表を務める。盧武鉉政権時の大統領引受委員会で統一・外交・安保諮問委員を歴任。「言葉と刀」、「MD本色」、「核の世界史」、「韓半島シナリオ」、「非核化の最後」など著書多数。


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