韓国の文在寅大統領は、8月17日に就任100日を迎えた。韓国メディアではこれに合わせ、様々な分析が出ている。各紙の内容に独自取材を加え、文在寅100日を俯瞰する。まずは各紙の支持率調査を見ていく。(ソウル=徐台教)
9社中5社で肯定評価が80%を超える
日本では余りおなじみではないかもしれないが、韓国で「100日」とはなかなか重要な節目だ。「蜜月の終わり」を意味し、以降は本格的な評価に入っていくことになる。
その真のスタートラインに立ってもなお、文大統領は高い支持率を維持し続けている。韓国メディア9社が行った世論調査の結果を表にまとめた。
国政への肯定的な評価は68.4%~85.3%とやや幅があるが、9社中5社が80%を超えている点から、高い水準にあることが分かる。
なお、韓国の世論調査の正確さについてはかねてより疑問が持たれていたが、今年5月の大統領選の結果が世論調査に沿ったものであったため、参考に値すると判断したい。
「韓国ギャラップ」によると、就任後100日の評価としては直接選挙が導入された1987年以降の大統領7人の中で2番目に高い数値だという。
「疎通」「庶民」「福祉」などが肯定理由
高い肯定評価の理由については、共通した傾向を読み取ることができる。上位に入った項目を並べると、以下のようになる。
・「国民との疎通および共感」(韓国社会世論研究所:34.0%、tbs/CBS:21.3%、中央日報:36.8%、韓国ギャラップ:19.0%)
・「福祉の拡大」(韓国ギャラップ:19.0%、tbs/CBS:23.0%、YTN:33.6%)
・「積弊や不正腐敗の清算」(韓国社会世論研究所:12.1%、中央日報:11.4%)
これ以外にも「庶民主義」(中央日報:14.4%)、「改革への推進力」(tbs/CBS:18.5%)、「国民の統合」(YTN:19.9%)、「政治改革」(YTN:16.8%)などが、主な支持の理由とされた。
こうした肯定評価の理由からは、朴槿恵前政権からの反動も読み取れる。「疎通」「庶民的」などのキーワードは、朴前大統領に不足するとされていた部分だ。
なお、北朝鮮政策を肯定評価の理由に選んだ回答者は、いずれの調査でも低かった(韓国社会世論研究所:3.7%、韓国ギャラップ:2.0%、tbs/CBS:4.9%、中央日報:2.1%、YTN:4.5%) 。
TK・60代以上・自由韓国党支持者が否定評価
否定的な評価を下した人々は、いわゆる「保守層」に分類される特定の地域・年齢・支持層への偏りが見られた。
まず、地域は大邱(テグ)市・慶尚北道(韓国では頭文字を取り「TK」と呼ばれる)で否定層が他の地域よりも顕著に多かった。KBSの調査では全体の否定層が13.4%のなか、TKでは26.9%におよんだ。さらに、ソウルでも否定層が全国平均よりも若干高い傾向が見られた。
年齢層では50代と60代以上による否定評価が他の世代に比べ目立った。韓国ギャラップの調査では60代以上の24%が否定的に見た。全体よりも約10%高い数値だ。9社中もっとも肯定意見が低かったローイシューの調査でも、60代以上の否定層は全体(19.9%)よりも明らかに高い32.0%となった。
支持層では、前与党の自由韓国党支持者の低評価が目立った(KBS:58.4%、ローイシュー:68.6%、韓国ギャラップ:50%)。
一方、中道を自称する国民の党と、新しい保守を掲げる正しい政党の支持層では、正しい政党の方に否定層が多かった(韓国ギャラップ:30%、KBS:20.8%)。
否定評価の理由については北朝鮮・外交政策への低評価が目につく。中央日報の調査では27.9%と否定理由の1位となった。YTNでも17.8%、CBSでも10.6%、韓国ギャラップでも8%と、いずれ上位にランクインしている。保守層が望む北朝鮮への先制攻撃をもいとわない強い姿勢が、「平和」と「対話」を掲げた文大統領に見られなかったことへの反発と見られる。
また、「過度な福祉」(韓国ギャラップ:16%)、「人気取り政策過多」(CBS:19.2%、韓国ギャラップ:11%)なども主な理由に挙がった。
あくまでの「ハネムーン」での評価…「今後100日で真価」
表面的に見た場合、文在寅政権への肯定的評価は就任直後の5月よりも5~10ポイント程度下がった程度で、数字の取り方によっては「ほぼ横ばい」と言うこともできる。
だが、個別の政策への評価を見る場合、まったく別の風景が見えてくる。
例えば、7月28日の北朝鮮による2度目のICBM(大陸間弾道ミサイル)発射を受け文大統領が決定した、THAAD(高高度防衛ミサイル)の臨時配置への肯定評価は、全体の肯定評価を下回る。中央日報では肯定62%:否定28%、KBSでは肯定71.8%:否定20.7%となっている。
さらに、6月19日に打ち出した「原発政策全面再検討」路線と、それに伴う原発建設工事の中断についてはより先鋭な評価の対立がある。KBSでは肯定67.6%:否定26.5%、中央日報の調査では肯定41.0%:否定39.6%となっている。
他にも、文政権の目玉政策である公務員増員(KBS:肯定57.5%、否定40.2%)、全国教職員組合(全教組)再合法化(文化日報:肯定51.2、否定41.2%)などでも評価は割れている。
こうした個別の問題への賛否に関わらず高い肯定評価を得ている理由は何か。
韓国政治に詳しい西江(ソガン)大学現代政治研究所の李官厚(イ・グァンフ)教授は筆者のインタビューに対し「個別の問題は政権とは関係が薄い。現在の文大統領への支持の多くは朴槿恵前大統領が民主化(87年)以降、最悪の『不通』大統領だったことによる『反射効果』が大きい。文大統領の開かれた姿勢に対し『大統領らしい大統領がいる』という信頼の現れ」と診断した。
確かに、筆者も事あるごとに韓国人に同じ質問を投げかけるが、似たような答が返ってくる。今のところは文大統領への「信頼」が根底にあると見てもよいだろう。だが、李研究教授は「年末までの『次の100日』に文大統領の真価が問われる」と警告する。

